幅・奥行ともに2尺(61.2センチ)の中型春日厨子で、背面を除く3面を観音開きの板扉とし、内部には春日曼荼羅(まんだら)及び法相八始祖(ほうそうはちしそ)を描いています。外部は、黒漆仕上げで細部の覆輪面等に朱漆を施しており、床でも漆で仕上げています。
板扉絵はすべて内壁だけに描かれており、小扉絵総計7面の板絵が描かれています。図様としては、背面板絵上部に春日曼荼羅、下部には仏舎利を納めた三面宝珠(ほうじゅ)を中心として、その周りに48の五輪塔を整然と描いています。構成は、春日逗子としては極めて異例なことで、本逗子の最も特徴的な点です。
全面扉と左右側面の両扉には、いずれにも僧形坐像の群像総勢23人が描かれており、法相関係の祖師像と考えられます。
また、厨子内に納められている附(つけたり)の不動明王及び両脇侍童子像は、鎌倉時代の像を模範とした近世初期の作品と考えられ、運慶らに代表される慶派系統の作例の関連はないと考えられますが、極めて洗練された技量の高い近世彫刻の一作例として評価されます。
県内で完成に近い形で残されている春日舎利厨子は珍しく、明治21年に滋賀県大津市三井寺(みいでら)より平山地区に常実坊が招来された経緯や、現在も地元の篤い信仰の対象となっている点と合わせて貴重な資料です。
*附・・本来のものにつけ加えられただけの、重要でないもの。
*慶派・・平安末期から江戸時代に至る仏師の一派。鎌倉時代に康慶・運慶・湛慶(たんけい)・快慶など、慶のつく名の仏師が輩出したことからの名称。七条仏所を形成し、造仏界の主流をなした。
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