はじめに「健康であることの大切さ」
人間にとって一番大切なことは、「健康である」ことではないでしょうか。
私たちの一生は、毎日の積み重ねです。毎日を健康に過ごすことが一生を健康に過ごすことになります。
しかし、私たちの日常生活は大変複雑で、ストレスや疲労が蓄積する環境におかれているのではないでしょうか。健康な時は何も気にとめませんが、病気になると「健康である」ことの大切さを痛感します。
健康を守るために、みんなで健康管理を考えて行く活動があちこちで生まれていますが、この中で温泉の見直しも話し合われています。
私たちも日常生活をふり返り、健康の3要素である「休養・運動・栄養」を自らの生活にバランスよく取り入れる努力が必要です。
ここでは「上手な温泉の入り方」をテーマに考えてみることにしました。
温泉はなぜ効くのでしょうか
入浴すると体に3つの物理的作用「温熱(度)・水圧・浮力」が働きます。これは、家庭の風呂でも同じです。温泉はこの他に、たくさんの化学成分を含んでいます。温泉の効果は、この化学成分の働きと温熱(度)の作用にあるといわれています。化学成分の吸収・刺激と温熱(度)の刺激が脳に働き、自律神経や内分泌などの正常化を促したり、老廃物などを排泄する働きを高めると考えられています。
また、大切なことは、山岳地や海べりの温泉へ転地することによって日常の勤労や家事から開放されるという精神的な安らぎも大きな効果といえます。
温泉は半健康状態の回復、疾病予防など健康増進などにすぐれた効果を示し、西洋医学を補う働きをもっていますが、急性の病気に対しては効果がないばかりか、病気を悪化させることもあります。
温泉で病気を治療する場合は必ず医師と相談し、指導に従いましょう。
上手な温泉の入り方
「温泉は万病に効く」とか「一日中たっぷりつかれば、それだけ効く」と誤解しているひとが、案外多いようです。むやみに入浴したり、飲んだりすると事故のもとです。温泉入浴についての十分な知識を持っていてこそ、温泉効果を高めることができます。
入浴前
- 入浴の前に休息をとりましょう!
温泉入浴は新陳代謝を高め、体力を消耗します。激しいスポーツをした直後の入浴や旅館に着くなりすぐ入浴することは、脳貧血などでたおれる原因になります。必ず休息してから入浴しましょう。また、極度に疲労している時は入浴しないことです。 - 食事の直前、直後と飲酒後の入浴はやめましょう!
食前、食後の30~60分の入浴は胃腸の働きを低下させ、消化不良の原因となります。また、飲酒後の温泉入浴や入浴中の飲酒は血圧を低下させるので、非常に危険ですから酔いを醒ましてから入浴してください。 - かけ湯してから入浴しましょう!
急に入浴すると体の表面の血管が一時的に収縮し、血圧を高めますので脳出血などの危険があります。
入浴時のかけ湯は体を暖め、血管を拡張させるので事故の防止になります。また、体の汚れを洗い落とすことは衛生上も必要なことですが、温泉効果を高めることにもなります。
入浴中
運動浴は別として温泉入浴中はゆったりした気分で、できるだけ安静にしましょう。大声をあげたり、歌ったりすると他人に迷惑をかけるだけでなく、湯疲れの原因にもなります。
- 湯の温度と入浴時間に注意しましょう!
首までどっぷりつかり、だらだら汗を流しながらの入浴や、ひっきりなしの入浴は疲労し、家に帰って寝込む結果になります。
1泊するひとは、夜ぬるめに、朝あつめに1回づつの入浴にとどめましょう。
湯の温度と入浴時間あつ目(42℃以上) | 5分間 | 朝風呂 |
普 通(39~41℃) | 10~20分間 | 夜入浴 |
ぬる目(38℃以下) | 20~40分間 |
- 高血圧症、心臓病のひとは、ぬるめの湯に入りましょう
血圧の高いひとや心臓の悪いひとは、湯口から離れたぬるめの場所を選んで入浴しましょう。
入浴後
浴槽から急に立ちあがり、真水で体を洗い流したり、すぐに食事をすることは事故につながったり、温泉効果を弱める結果になります。
- ゆっくりと立ちあがりましょう!
急に立ちあがった途端、目が回って気分が悪くなったり、目の前が暗くなることがあります。これは、水圧から開放されるので血液が体の表面に向かって流れ出すため、血圧が下がり過ぎて脳貧血を起こすからです。事故を防止するために浴槽からゆっくり立ちあがりましょう。 - 入浴後は、体を真水で洗わないようにしましょう!
真水で洗い流すと温泉成分を肌から洗い落とすことになります。温泉の効果を弱めることにもなりますので、拭う程度にしましょう。しかし、高齢者や皮膚の弱いひとが酸性泉やイオウ泉に入浴した時は、軽く湯洗いした方がよいでしょう。 - 入浴後は十分休息をとりましょう!
30分間の温泉入浴で1000mを疾走したと同じエネルギーが消耗するといわれています。健康なひとでも30-60分、高齢者・病弱なひとは2時間以上の休息が必要です。 - 入浴後は十分な栄養をとりましょう!
入浴は体内の栄養分を消耗します。これを補うために6つの基礎食品をバランスよく食べましょう。特に、野菜や牛乳はかかすことのできないものです。
温泉療養をされるかたに
温泉は西洋医学と違って、たちどころに効果が現れるというものではありません。むしろ漢方薬と同じで病気と闘う力を強め、治すのですから療養には3~4週間必要です。
療養されるひとは自己判断ではなく、必ず医師に相談し、指導に従いましょう。
- 食事には注文をつけましょう!
よい温泉を選んでも食べ放題・飲み放題では効果があがりません。自分の健康に合わせた料理をあらかじめ旅館に注文しておくことが大切です。
温泉は万病に効かない
温泉は「万病を治す」と古くからいわれていますが、この考えは間違いです。では、どんな症状がいけないのか調べてみましょう。
入浴してはいけない場合
- 妊娠中
妊娠初期・末期の数日間以上の温泉入浴は、流産や早産の原因となることがありますので、医師の診断を受け指示に従ってください。 - 生理中
生理中1~2日は、温泉入浴によって出血がひどくなったり炎症を起こしたりします。 - 予防注射を受けたとき
体が免疫体を作るよう反応しているため、入浴の刺激に順応できない状態になることがあります。 - 飲酒後、極度に疲労しているとき
入浴をやめましょう。
入浴してはいけない病気
- 発熱性疾患にかかっているとき
発熱のある病気のとき、体内では全力をあけて回復しようとしています。このときは入浴しないで様子をみたり、医師にかかることが大切です。 - 病気が進行しているとき
著しい高血圧症、動脈硬化症、重症の糖尿病、心臓病、腎臓病、発病直後の潰瘍等があるときは、温泉入浴は危険です。症状が安定してから、医師の指示に従って入浴してください。 - 悪性しゅよう(ガン)の疑いのあるとき
温泉入浴はしゅようが発生すると促進的に作用し、悪化させますので、入浴ば絶対にやめてください。なお、根治手術後の入浴については、必ず医師の指示を受けてください。 - 伝染性疾患にかかっているとき
隔離を必要とする伝染病、進行性の梅毒・淋病・結核のとき、温泉入浴は危険であるとともに公衆衛生上できません。また、治療後は必ず医師の許可と指示に従ってください。
おわりに
「温泉入浴による効果と入浴上の注意」を中心に話をすすめてきましたが、家庭の風呂でも共通していることばかりです。この記事を参考にしてご家庭でもご活用ください。
そしてぜひ、郷土の名湯「中川温泉」へおこしいただければ幸いです。
資料提供:神奈川県足柄保健所、小田原保健所